感染性
感染経路
感染経路は咳・くしゃみなどによる飛沫感染が主であり、経口・経鼻で呼吸器系に感染します。
飛沫核感染(空気感染)や接触感染など違った形式によるものもあります。
予防においてはマスクが大変有用であり飛沫感染に対しては特に効果的であるが、形状や機能性などによっては完全に防げない場合もあります。
マスクのみでは接触感染を防ぐことができないため、手洗いなどの対策も必要です。
マスク
潜伏期間
潜伏期間は1–2日が通常ですが、最大7日までです。
感染者が他人へウイルスを伝播させる時期は発症の前日から症状が軽快してのちおよそ2日後までです。
症状が軽快してから2日ほど経つまでは通勤や通学は控えた方がよいです。
A型インフルエンザ
A型インフルエンザはとりわけ感染力が強く、症状も重篤になる傾向があります。
まれにA型、B型の両方を併発する場合もあります。
予防方法
一般的な予防方法としては、日常生活上の注意とワクチンを使用した予防接種があります。
感染予防対策
免疫力の低下は感染しやすい状態を作るため、偏らない十分な栄養や睡眠休息を十分とることが大事です。これは風邪やほかのウイルス感染に関しても非常に効果が高いです。
石鹸による手洗いの励行や、手で目や口を触らないこと、手袋やマスクの着用といった物理的な方法でウイルスへの接触や体内への進入を減らします。
飛沫感染防止として医療機関では防塵性の高い使い捨て型のマスクが利用されており、一般にも用いられるが、正しい方法で装着し顔にフィットさせなければ有効な防塵性を発揮できません。
感染の可能性が考えられる場所に長時間いることを避ける必要があります。人ごみや感染者のいる場所を避けるなど気をつけてください。予防にマスクを用いた場合は速やかに処分します。
換気をこまめに行います。空気清浄機などでも良いです。部屋の湿度(50〜60パーセント)を保ちます。これにより、ウィルスを追い出し飛沫感染の確率を大幅に減らすことが可能です。
予防効果としてのうがいが有効です。
ウィルスは口や喉の粘膜に付着してから細胞内に侵入するまで20分位しかかからないので人ごみから帰ったら即座にしなければうがいの効果は期待できないとする意見があります。
水道水によるうがいは有意に風邪の感染を減少させるという研究結果が発表されています。この研究ではヨード液によるうがいは効果が見られなかったということです。
感染者が使用した鼻紙やマスクは水分を含ませ密封し、小まめに廃棄や洗濯をします。感染者と同じタオルを使用しないで下さい。感染者の触れた物をエチルアルコールや漂白剤などで消毒します。
ウイルスは日光や消毒薬に非常に弱いため、衣類に唾液・くしゃみ等が付着したものからの感染は考えにくいですが、一応こまめに洗濯した方がよいです。
インフルエンザワクチン
ワクチンは身体の免疫機構を利用しウイルスを分解・精製したHA蛋白などの成分を体内に入れることで抗体を作らせ、本物のウイルスが入ってきても感染させないようにします。
ワクチンの接種により仮にインフルエンザにかかったとしても軽症で済むとされますが、個人差や流行株とワクチン株との抗原性の違いにより、必ずしも十分な効果が得られない場合もあります。投与手段は皮下注射や筋肉注射ですが、米国では鼻噴霧式のものも認可されています。
効果は免疫力に比例するため青年者にはもっとも効果が高いですが、若齢者・高齢者は免疫力が低いので効果も低くなります。過労、ストレス、睡眠不足や不摂生な生活をすれば身体の免疫力そのものが低下するのでワクチンを接種したから大丈夫と過信してはいけません。
ワクチンの製造には6ヶ月程度かかるため、次の冬に流行するウイルス株を正確に予測することは難しいです。
ウイルス株が変異していればその効果はいくぶん低下しますが、アフィニティーマチュレーション(抗原結合能成熟)によりある程度の免疫効果が期待できます。
これは弱毒性ワクチンよりも不活化ワクチンの方が効果があります。抗原型の一致・不一致にかかわらずもともと免疫のない若齢者では弱毒性ワクチンの方が有効とされています。
感染歴のある成人では、交差免疫により生ワクチンウイルスが増殖する前に排除され免疫がつかないこともあります。このような場合は、不活化ワクチンの方が高い効果が得られます。

ワクチンの接種料金は3000–6000円程度です。料金は医療機関によって異なり、健康保険の法定給付の対象外です。
健康保険組合や国民健康保険組合等では保険者独自の給付として、被保険者や世帯主に対し接種費用の助成を行う場合もあります。
65歳以上の高齢者、60–64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な人については予防接種法上の定期接種に指定され、多くの自治体において公費助成が行われています。
日本では年末になるとインフルエンザワクチンの品不足が毎年のように起きていました。一部の医療機関による買い占めが原因で返品制度に問題があると言われてきましたが、販売元がワクチンをワクチンメーカーから買取り制にしたり一部流通分を不足した場合に融通するため確保しておくなどの努力の結果、かつてのようなワクチンの品不足は解消されてきています。
現行の皮下接種ワクチンは感染予防より重症化の防止に重点が置かれた予防法であり、健康な成人でも感染防御レベルの免疫を獲得できる割合は70%弱(同時期に2度接種した場合は90%程度まで上昇)です。
感染防御レベルの免疫を得られなかった者の中で発症しても重症化しないレベルの免疫を獲得している割合は80%程度とされます。100万接種あたり1件程度は重篤な副作用の危険性があることなども認識しなければなりません。
免疫が未発達な乳幼児では発症を予防できる程度の免疫を獲得できる割合は20-30%とされ、接種にかかる費用対効果の問題や数百万接種に1回程度は重篤な後遺症を残す場合があることを認識した上で接種をうける必要があります。
米家族医学会では「2歳以上で健康な小児」への接種を推奨しています。乳幼児の予防のためには、本人がワクチンの接種を受けるよりも、家族がまず接種を受け、家族内でうつさない、流行させない体制を作る方が有効であろうと思われます。
インフルエンザワクチンの接種不適当者(添付文書には「予防接種を受けることが適当でないもの」とされるが、通常の薬剤における「禁忌」に相当する)は
1.明らかな発熱を呈する者、
2.重篤な急性疾患にかかっている者、
3.本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあるのが明らかな者、
4.上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者である(以上、インフルエンザHAワクチン「生研」の添付文書より引用)。
循環器、肝臓、腎疾患などの基礎疾患を有するものや痙攣を起こしたことのある者、気管支喘息患者、免疫不全患者などは接種に注意が必要な「要注意者」とされます。
かつてはこれらのような患者には予防接種を「してはならない」という考え方が多かったが、現在ではこれらの患者こそインフルエンザ罹患時に重症化するリスクの大きい患者であり、予防接種のメリットがリスクよりも大きいと考える医師が多くなっています。
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであるため、免疫不全患者に接種してもワクチンに対して感染を起こす心配はない。しかし、効果が落ちる可能性はあります。
インフルエンザワクチンは鶏卵アレルギーの患者にも接種の際に注意が必要であるとされ、一部の施設では接種自体行っていません。施設によっては皮内テストなどを行った上で接種する、2回に分割して接種する、エピネフリンおよび副腎皮質ステロイド製剤を準備した上で慎重な観察の下に接種するなどの工夫をして接種を行っています。
かつては日本でも学校で集団接種が行われていましたが、鶏卵アレルギーの問題のため現在は任意となっています。インフルエンザ自体に対する集団接種の効果はある程度はあるものの、費用対効果あるいはリスク対効果の点では不明です。
弱毒性インフルエンザワクチン
点鼻ワクチンであり、針を介さないため針を好まない人に有用です。また、生ワクチンであるが故、抗体の定着も良好。適応は5歳以上、50歳未満。禁忌は不活化ワクチンとは対照的に慢性的な循環器・腎臓・呼吸器疾患や代謝疾患、血液疾患、易感染性の者、妊娠している女性、ギラン・バレー症候群を既往に持つ者。副作用で頻繁に起こりうるのは鼻炎や感冒症状。日本では未承認です。よって輸入ワクチン取扱い医療機関にて申込み、全額自己負担での接種となります。
いずれのワクチンもどんな病院でも接種が可能というわけではないので、各自治体の医師会ホームページなどで公開されている予防接種実施医療機関を調べておくことをお勧めします。
抗インフルエンザウイルス薬の予防利用
治療用の薬であるオセルタミビル(商品名「タミフルカプセル75」)・ザナミビル(商品名「リレンザ」)は、予防用としても使用認可されています。予防薬としての処方は日本では健康保険の適用外であり、原則的な利用条件が定められています。
インフルエンザ感染症を発症している患者の同居家族や共同生活者(施設などの同居者)が下記のような場合には、タミフルのカプセル製剤を1日1回、予防使用することが認められています(7–10日間、継続して服用する)。健康成人と13歳未満の小児は予防使用の対象になりません。
高齢者(65歳以上)
慢性呼吸器疾患患者、又は慢性心疾患患者
代謝性疾患患者(糖尿病など)
腎機能障害患者
「リレンザ」の予防投与では、その対象が「原則としてインフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族または共同生活者である次の者:
高齢者(65歳以上)
慢性心疾患患者
代謝性疾患患者(糖尿病等)
腎機能障害患者
検査方法
検査キット
2001年頃より迅速に診断が可能な検査キットが臨床の現場で使われ始め、現在は普及しています。
臨床検査技師など専門家がいなくても簡便にできます。鼻の奥の咽頭に近い部分を採取すると検出率が高いとされ、検体は基本的にその部分から採取されます。
時間的には15–20分で結果が分かります。A型とB型の鑑別も可能です。
成田空港ゲート間を走って移動する検疫官ら(2009.05.05)
検査キット
オセルタミビル(商品名「タミフル」 - ロシュ/中外製薬)は発症後48時間以内が非常に有効とされるため、迅速診断は非常に重要な検査方法となっています。
ただし、発症した直後ではウイルス量が少ないため陽性と判定されないことがあります。
発症後2日目が最も陽性率が高いとされ、発症後4-5日たつと陽性率は減少します。
抗ウイルス薬による治療は発症後48時間以内でないと効果が期待できないため、検査で陰性と判定されても症状などから医師の判断で抗ウイルス薬を処方する場合もあります(高齢者などのハイリスク患者や受験生など)。
治療方法
抗インフルエンザ薬
インフルエンザウイルス自体に対する治療としては抗インフルエンザ薬しかないですが、その効果は根本的なものではなく発症後早期(約48時間以内)に使用しなければ効果がありません。
日本において、抗インフルエンザ薬として認められているものを下記にあげます。
オセルタミビル(商品名「タミフル」 - ロシュ/中外製薬)
ノイラミニダーゼ阻害薬です。カプセルとドライシロップがあります。適用上、A型・B型両方に使用可能ですが、その根拠ではB型のインフルエンザ患者はわずか3%程度しか含まれていません。
オセルタミビルの臨床効果として、平均治癒期間を4.9日から3.6日に29.1時間短縮する。未成年服用者の異常行動例が報告されていますが、因果関係については不明です。
ザナミビル(商品名「リレンザ」 - グラクソ・スミスクライン)
ノイラミニダーゼ阻害薬です。吸入薬として使用します。A型・B型両方に効果があります。未成年服用者の異常行動例が報告されていますが、因果関係については不明です。
アマンタジン(商品名「シンメトレル」など)
錠剤となっています。A型のみの効果であるので注意が必要です。M2蛋白阻害薬です。この薬は脳梗塞後遺症やパーキンソン病にも効果があります。
開発中のインフルエンザ治療薬には次のようなものがあります。
T-705(富山化学工業) - RNAポリメラーゼ阻害剤であり、ウイルスの遺伝子複製時に作用を示し、その増殖を防ぐ効果があります。高病原性トリインフルエンザH5N1型を含む広範囲なインフルエンザをターゲットとして臨床試験中です。
ペラミビル(バイオクリスト、日本では塩野義製薬がライセンス) - ノイラミニダーゼ阻害薬です。A型およびB型インフルエンザウイルスに抗ウイルス活性を有し、H5N1型にも活性を示します。臨床試験中です。
漢方薬
以下のとおり一部の漢方薬には、日本においてインフルエンザ(あるいは流感)の適用を承認されているものがあります。同名処方であっても薬事法に基づく製造販売承認上の効能・効果の承認内容が異なる場合があります。
麻黄湯
「悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:感冒、インフルエンザ(初期のもの)…」との効能・効果の承認があります。
竹筎温胆湯
「インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、平熱になっても気分がさっぱりせず、せきや痰が多くて安眠が出来ないもの」との効能・効果の承認があります。
柴胡桂枝湯
「発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症:感冒・流感・肺炎・肺結核などの熱性疾患…」との効能・効果の承認があります。
漢方薬
風邪症候群(インフルエンザ)
対症療法
暖かい場所で安静にして、水分を十分に摂ります。空気の乾燥に気をつけます。特に体を冷やさないこと、マスクを着用するなどの方法でのどの湿度を保つことが重要です。
外出は避けます。うつす/うつされる機会をなるべく減らすことが大切です。
インフルエンザウイルスは熱に弱いので、微熱はあえてとる必要はありません。熱が高く苦しい場合などには適宜、解熱剤を使用します。
食事が摂取できないなどの場合は補液が必要となります。
トピックス
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2005年 - 2006年のインフルエンザについてアメリカではアマンタジンとリマンタジンを使用しないように勧告を行いました(リマンタジンは日本では販売されていない)。
このシーズンに流行のインフルエンザウイルスの90%以上がこれらの薬剤に耐性を得ていることが判明したためです。
2002年冬、インフルエンザが非常に流行したためインフルエンザ治療薬が不足するなどの問題が起こったことがあります。
小児用解熱剤
解熱に使用できる薬剤は小児ではアセトアミノフェン(商品名:アンヒバやナパ等)に限られます。
ジクロフェナクナトリウム(商品名「ボルタレン」等)やメフェナム酸(商品名「ポンタール」等)、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を15歳未満の小児に使用するとライ症候群の併発を引き起こす可能性が指摘されているため、原則使用が禁止されています。
そのため小児のインフルエンザ治療においてはNSAIDsは使用せず、よほど高熱の時のみアセトアミノフェンを少量使用するのが現在では一般的です。
市販の総合感冒薬は効果がない。むしろ前述のNSAIDsを含むこともあり避けるべきです。
TOPIC
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