新型インフルエンザに、漢方薬の銀翹散を

新型インフルエンザが猛威をふるっています。流行がいつまで続くのか、不安な毎日を過ごしている方が多いと思います。もしもかかってしまったら、タミフル・リレンザに頼るしかないといわれている中で、たいへん注目されているのが漢方薬の「銀翹散(ぎんぎょうさん)」です。
Q.「銀翹散」って何なの?
A.中国の漢方医が使う代表的な風邪薬です。
日本で漢方の風邪薬というと、まず思い浮かぶのが「葛根湯(かっこんとう)」や、「麻黄湯(まおうとう)」ではないでしょうか。実はこれらは、風邪の症状の中の2割程度にしか効果がありません。悪寒(ガタガタするさむけ)を感じる時には、効きます。
中国の中医師(漢方医)が使う代表的な風邪薬は、「銀翹散(ぎんぎょうさん)」です。この生薬の銀翹散は、特に、熱が上がり、関節痛やのどの痛みが出る、インフルエンザの治療薬としても注目されています。
※「銀翹散」中国漢方薬の代表的な風邪薬の一つ。成分はキンギンカ(金銀花)、レンギョウ(連翹)、キキョウ(桔梗)、カンゾウ(甘草)、ハッカ(薄荷)、タンズシ(淡豆?)、ゴボウシ(牛蒡子)、タンチクヨウ(淡竹葉)、ケイガイ(荊芥)、レイヨウカク(羚羊角)の10種類の生薬の組み合わせです。

Q.中医学でいう邪とは何なの?
A.からだに悪い影響を運ぶものです。
外邪中医学では、正気と邪(じゃ)の力関係によって病気が起こると考えられています。
正気とは、生命力、抵抗力、免疫力など、からだを健康に保とうとする力のことです。邪は健康を乱そうとするもので、邪の力が正気よりも強くなった時に発病するのです。
邪の種類には、風(ふう)、寒(かん)、熱(火)(ねつ(か))、暑(しょ)、湿(しつ)、躁(そう)などがあります。これを「外感病邪(外界から人体を襲う病邪)」または六淫(ろくいん)といいます。六淫(ろくいん)とは、人体を障害する6種類の外邪(がいじゃ)の総称です。
Q.風邪(かぜ)には2つのタイプがあるの?
A.「風寒感冒」(青い風邪)と「風熱感冒」(赤い風邪)です。
風寒・風熱風によって寒が運ばれ、発症するのは「風寒感冒」」(青い風邪)です。寒気がして、熱が出て、鼻水が出るのが主な症状です。熱が主症状の場合は「風熱感冒」(赤い風邪)といい、体が熱くなって、口の渇きを伴うのどの痛みや頭痛、せきが出るなどの症状がみられます。
運ばれる邪によって風邪(カゼ)の症状も異なり、ひき始めの症状によって、大きく「風寒」と「風熱」の2つのタイプに分けられるというのが中医学の考え方です。
Q.タイプによって薬も違うの?
A.インフルエンザは「風熱感冒」です。
中医学では、症状に合った薬を使います。葛根湯や麻黄湯は「風寒感冒」(青い風邪)に、銀翹散は、「風熱感冒」(赤い風邪)に効果がある代表的な生薬です。
38℃以上の発熱、全身の関節が痛くなり、せきが出て、のどが痛い、急性呼吸器症状を伴うインフルエンザは「風熱感冒」。中国では、インフルエンザの治療薬として、主に銀翹散が使われているそうです。
Q.銀翹散は、なぜ日本では使われてこなかったの?
A.鎖国で情報が入ってこなかったのです。
上海黄浦区豫園(湖心亭と九曲橋)「銀翹散」が作られたのは、中医学がもっとも発達発展した17世紀の清の時代です。
そのころの日本は江戸時代でしたので、鎖国をしていたために、温病理論(おんびょうりろん)に関して書かれた温病条弁(おんびょうじょうべん)の中にある「銀翹散」の情報が伝わってこなかったといわれています。
日本では、そのずっと以前の漢の時代に著された医学書「傷寒論」を基に作られた「葛根湯」が、風邪薬として定着したというわけです。
漢方の歴史へ
Q.銀翹散に対する現在の評価はどうなの?
A.さまざまの学会で研究発表されています。
ここ数年来の、鳥インフルエンザ(H5N1)やSARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ(H1N1)の流行で、「銀翹散」の効力が注目されるようになってきました。
2009年の日本化学療法学会や日本東洋医学会、和漢医薬学術大会などでも、「銀翹散」の抗炎症作用、抗ウイルス作用、インフルエンザウイルス感染症における解熱作用などについての研究発表が行われています。
Q.新型インフルエンザの治療薬といえば何なの?
A.基本は抗ウイルス薬、理想はタミフルとの併用です。
タミフル新型インフルエンザが疑われたとき、日本の医療機関では、抗ウイルス薬のタミフル、もしくはリレンザが処方されています。医師によってはさらに抗生剤、抗菌剤、解熱剤等を追加する処方が多くなります。
早めのタミフル服用は、特に新型インフルエンザの重症化を防ぐうえで、効果があるのは確かです。統合医療的な立場でいえば、インフルエンザの治療には、タミフルでウイルスの増殖を止め、漢方の「銀翹散」などの風熱薬を組み合わせて使うのが一番効果的ではないかと思います。
残念ながら日本では、「銀翹散」は保険薬ではないので、市販薬を使うしかないのが現状です。とはいえ、医師や薬剤師と相談のうえ、使用することが原則です。
Q.漢方薬の使い方はどうなの?
A.発熱したらまず「銀翹散」です。
周辺で新型インフルエンザが流行しているときに、発熱など、インフルエンザ様の症状に見舞われたら、2~3日間「銀翹散」を使用して、自然に熱を冷まします。
その後は柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)(寒熱往来証)、桂麻各半湯(けいまかくはんとう)(風寒証)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)(気虚証)などに切り替えるのが、漢方薬での治療のポイントです。

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